公務員試験の思想で頻出のキルケゴール。
社会の歯車になる人
産業革命以後、目覚しい技術革新などの発展で人々の生活が物質的に豊かで便利になりました。反面、社会や文明が機械化して人間はその一部の歯車のようになって人間性が失われていき、平均的で皆「顔の見えない」存在となっていきました。
キルケゴールはこうした人間性の危機を回復するために実存主義を唱えました。自分がどう生きるかという主体的心理を求めた。
実存は三段階ある。実存というのは本来の自己という意味で使われて、かけがえのない一回限りの存在、「今ここに生きる私」のことです。
第一段階は感覚的な享楽を求めてやまない美的実存です。しかし、それは欲望や本能の世界で、それらは倦怠と絶望にとらわれて挫折してしまいます。
第二段階はこの絶望から立ち直ろうとする倫理的実存です。それは精神的な愛情のように、自己のすべてをかけて他者へつくそうとすることです。ここでも、そういうボランティアに徹すると人間は限界を感じて絶望します。
第三段階は絶望して自己矛盾を誠実に受け止め、「単独者」として神の前に立つとき、宗教的実存の段階になります。ここで自己を回復し、絶望と罪の意識を乗り切ることができます。